CONCRETE@i®
(コンクリート・アイ)
コンクリートの状態を見える化し、品質を確保・向上!
コンクリート構造物は、車などの製品と異なり、「一品生産」と言われます。特に、コンクリート工事は、地域によって性状の異なる生コンクリートを、異なる部位に、異なる条件で施工し、季節や天候に左右されながら進めなければならず、施工方法や管理が不適切だと、構造物の品質低下を招き、寿命を短くしてしまいます。
鹿島では、生コンクリートの受入れ時の性状や打継ぎ処理の状況、表層の品質など「コンクリートの状態」をリアルタイムで「見える化・データ化」して管理をし、データに基づいた振返りによる改善活動(PDCA)に反映させて、構造物の品質を確保するためのシステム「CONCRETE@i®」の構築を進めています。施工情報を蓄積・分析し、よりよい構造物の構築を実現します。
令和4年度土木学会 技術開発賞
令和2年度「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」総合評価A
- キーワード
- コンクリート工事、品質確保、施工管理、見える化、デジタルデータ、PDCA
データに基づくPDCAで品質確保
「CONCRETE@i®」により、以下のことを可能にします。
①コンクリートの施工にかかわる情報をリアルタイムでデータ化し、状況判断や品質管理への反映を高速化
②画像データを含む情報を、工事関係者と遠隔臨場で共有し、管理および検査を高度化・省人化
③施工状況と品質を紐づけてデータ分析し、品質と生産性を向上(PDCA)
④施工情報のエビデンス管理とトレーサビリティを容易に
⑤データの蓄積と分析により、属人的なノウハウ(暗黙知)をデータで継承、より良い施工を実現
トラブルを防止し、コンクリート構造物の品質と施工管理・検査の生産性を向上させます。
遠隔臨場による確認状況とシステム導入による時短効果
CIMと連動させた品質のトレーサビリティ
適用実績
東京外環中央JCT北側ランプ
(その2)工事
(令和2年度PRISMにて試行)
場所:東京都三鷹市
竣工年:2022年3月
発注者:国土交通省関東地方整備局
規模:函渠構造物 コンクリート約2.7万m3
鉄筋約4,730t
学会論文発表実績
- 「コンクリート工事を見える化する -データプラットフォーム「CONCRETE@i」を構成する各種要素技術-」,建設機械施工,Vol.72,No.9,2020年9月
- 「コンクリートの状態・作業状況を見える化する「CONCRETE@i®」~その構成技術と適用事例~」,セメント・コンクリート,No.895,2021年9月
コンクリートの表層品質AI目視評価アプリ
(CON@i)
コンクリート構造物の表層の状態を現場で・誰でも・簡単にデータ化
高速道路の連続ボックスカルバート、橋梁、トンネルなど、長期にわたりコンクリートを打設する現場では、コンクリート打設のたびに表層品質向上のPDCAサイクルを回し、改善を図っています。しかし、打設後のコンクリートの表層品質を定量的に評価・分析するには専用の試験装置や専門技術者による判定が必要であったことから実施されない場合が多く、評価結果に基づいて品質向上のための改善を行うのは極めて困難でした。
本アプリは、タブレットで撮影した写真から表層品質の評価・分析ができます。現場で・誰でも・簡単にコンクリート構造物の表層品質を評価し、データに基づく品質向上のPDCAサイクルを実践できます。
2019年日本コンクリート工学会 技術賞
コンクリートの表層品質を評価している様子
- キーワード
- コンクリート工事、品質確保、品質向上、表層品質、見える化、AI、高度化、PDCA
本アプリの概要
本アプリを用いることで、現場で・誰でも・一定の精度でコンクリート構造物の表層品質を評価できます。評価の手順は、以下のとおりです。
①タブレットのカメラでコンクリートの表層の写真を撮影。
②コンクリート表層品質を6つの項目(打重ね、表面の色つや、表面気泡、沈みひび割れ、型枠継ぎ目のノロ漏れ、砂すじ)に分けて、1点から4点まで0.5点刻みでタブレットに評価を入力。評価は、点数入力の際に表示されるグレード分けされたサンプル画像と撮影した写真を比較できるため、容易に判定可能。
③AIが6項目の評価値を0.1点刻みで表示。AIによる評価を目安に②で入力した評価をチェックするため、入力者の個人差を解消した一定精度での評価が可能。
表層品質AI評価アプリによる判定の一例
特長・メリットココがポイント
品質向上のためのPDCAサイクルを効率的に実施
表層品質の評価結果はクラウド上に自働保存されるため、同一現場での評価結果の推移を即座に確認できます。また、評価点に応じて、表層品質向上のための改善ポイントが表示されるため、PDCAサイクルを効率的に実施できます。
評価結果の推移の一例
表層品質向上のための改善ポイント表示の一例
デジタル化により評価・検査の効率化が可能
発注者の立会い検査を遠隔臨場で実施することで、管理・検査の省力化を実現できます。
帳票がワンタッチで自働作成されるため、作業の省力化にも寄与できます。
出力帳票の一例
適用実績
海老江工区開削トンネル工事
場所:大阪府大阪市
工期:2024年10月(予定)
発注者:阪神高速道路
規模:開削トンネル区間
土工・擁壁区間延長508m 高架橋下部工13基
隼人港橋下部工工事
場所:鹿児島県霧島市
竣工年:2024年9月(予定)
発注者:西日本高速道路
規模:橋梁下部工 コンクリート工約800m3
鉄筋約88t
東京外環中央JCT北側ランプ
(その2)工事
(令和2年度PRISMにて試行)
場所:東京都三鷹市
竣工年:2022年3月
発注者:国土交通省関東地方整備局
規模:函渠構造物 コンクリート約2.7万m3
鉄筋約4,739t
学会論文発表実績
- 「AIを活用した表層品質目視評価システムの構築と現場運用に関する一考察」,コンクリート工学年次論文集,Vol.45,No.1,2023年
- 「AIを用いた沈みひび割れ目視評価点の判定に関する一検討」,土木学会,第77回年次学術講演会,2022年
- 「機械学習を活用した目視評価による表層品質評価システムに関する一検討」,コンクリート工学年次論文集,Vol.42,No.1,2020年
- 「目視評価法によるコンクリート構造物の表層品質評価の継続的適用と各種品質向上施策の効果の検証」,コンクリート工学年次論文集,Vol.39,No.1,2017年
- 「コンクリート構造物の品質向上と表層品質評価手法」,コンクリート工学,Vol.50,No.7,2012年
コンクリートの打継面評価システム
(CON@i)
「誰でも」「どこでも」一定の基準で打継面の状態を良否判定!
コンクリート打継面処理の良否判定は、これまで検査員の感覚・経験によって判断されていることから、ばらつきが生じやすいのが実状です。しかし、打継面の処理はコンクリート構造物の品質を確保する上で重要な工程であり、処理が不十分であると漏水やエフロレッセンス、鉄筋腐食等が生じ、構造物としての機能や耐久性の低下に直結します。熟練技術者が減少していく中、コンクリートの打継面処理の良否を一定の基準で判定し、品質を確保していく手法が望まれています。
そこで鹿島は、タブレット端末で撮影した写真から打継面処理状態の良否をリアルタイムで判定し、見える化するシステムを開発しました。
特許登録済
タブレットで打継面を撮影
打継面の評価結果画面
関連情報
- キーワード
- コンクリート工事、品質確保、打継面処理、見える化、高度化、遠隔臨場
本システムの概要
本システムは、打継面処理が不十分な箇所を「その場で」「瞬時に」検出できるシステムです。タブレット端末を用いて撮影した画像に対し、アプリケーションで評価する範囲を選択すると、任意のメッシュごとに、処理が十分な箇所は「青」、不十分な箇所は「黄」、「赤」で段階的に表示します。
打継面の処理状態を客観的に見える化することで、検査員の経験の差によらず、「誰でも」「どこでも」一定の基準で良否判定できるため、打継面の品質を確保・向上することができます。
本システムの使用手順
システムを使用した検査・判定の流れ
特長・メリットココがポイント
誰でもどこでも一定の基準で判定
判定は、打継面の凹凸の状態や粗骨材の露出状態によって異なる「輝度分布」を指標としています。
デジタル値で良否を判定するため、その場で、感覚によらない客観的な判定が可能です。
画像の輝度分布を用いた打継面処理の良否判定の概念
デジタル化により管理・検査の省力化が可能
発注者と施工者の合意形成に活用でき、立会い検査を遠隔臨場で実施することで、管理・検査の省力化を実現できます。
帳票が自働作成されるため、トレーサビリティを確実に行え、作業の省力化にも寄与できます。
管理・検査帳票の一例
適用実績
東京外環中央JCT北側ランプ
(その2)工事
(令和2年度PRISMにて試行)
場所:東京都三鷹市
竣工年:2022年3月
発注者:国土交通省関東地方整備局
規模:函渠構造物 コンクリート約2.7万m3
鉄筋約4,730t
京都線・千里線淡路駅周辺
連続立体交差工事
(若手職員の教育ツールとして活用)
場所:大阪府大阪市
竣工年:2022年1月
発注者:阪急電鉄
規模:ラーメン高架橋(幅:13m~28m、高さ:17m~23m)
2層トラス橋2橋(60m、77m)
成瀬ダム堤体打設工事(第1期)
場所:秋田県雄勝郡東成瀬村
工期:2018年5月〜2023年3月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:堤高114.5m 堤頂長755m
堤体積485万m3の台形CSGダム
学会論文発表実績
- 「画像処理による打継処理の評価システムの開発」,土木学会,第70回年次学術講演会,Ⅴ-448,2015年9月
- 「水平打継面における処理方法の違いが表面形状および付着強度に及ぼす影響」,土木学会,第70回年次学術講演会,Ⅴ-225,2015年9月
- 「画像による打継面の処理状態の簡易評価方法の検討」,土木学会,第71回年次学術講演会,Ⅵ-776,2016年9月
- 「画像による打継面処理状態の簡易評価方法の改良」,土木学会,第72回年次学術講演会,Ⅵ-864,2017年9月
生コンクリートの全量受入れ管理システム
(CON@i)
リアルタイム判定で施工性の悪い生コンクリートを排除
コンクリートの品質管理・検査においては、初期欠陥を生じるリスクの高い生コンクリートを確実に排除することが重要です。しかし、一般に、スランプ試験等のコンクリートの受入れ検査は、20~150m3に1回しか行われないため、コンクリートの全量に対して、自働で管理する技術が望まれています。
そこで、監視員を配置することなく、現場に搬入されるコンクリートの全量に対して、自働でコンクリートの性状を判定できる、全量受入れ管理システムを開発しました。
特許出願中
全量受入れ管理システムによるコンクリートの性状判定状況(遠隔監視)
関連情報
- キーワード
- コンクリート工事、品質確保、品質管理、受入れ管理、スランプ、見える化、高度化、遠隔臨場
自働で生コンクリートの全量管理を実現!
本システムは、アジテータ車のシュート部を流下するコンクリートをビデオカメラで撮影することで、コンクリートの性状をPCにて分析・見える化し、施工性の良否をリアルタイムで判定します。
全量受入れ管理システムでは、以下のステップでコンクリートの性状を判定します。
①アジテータ車のシュートをビデオカメラで撮影
②PCに動画像が送信され、AIで測定範囲を自働認識
③コンクリートの性状を分析し、施工性の良否をリアルタイムで判定
④データがクラウド化され、遠隔で性状を確認
⑤硬いコンクリートを検知すると、アラートを発信
⑥コンクリートの受入れを停止し、スランプ試験により性状を確認
生コンクリートの受入れ管理
本システムの構成および使用手順
特長・メリットココがポイント
高精度でスランプを推定
本システムにより、±2.5cm程度の高精度でスランプを推定できます。
実測スランプと推定スランプとの関係
施工性の悪いコンクリートを排除
スランプを全量で管理し、施工性の悪いコンクリートを確実に排除できます。
スランプのモニタリング状況とアラートの発信
適用実績
東京外環中央JCT北側ランプ
(その2)工事
(令和2年度PRISMにて試行)
場所:東京都三鷹市
竣工年:2022年3月
発注者:国土交通省関東地方整備局
規模:函渠構造物 コンクリート約2.7万m3
鉄筋約4,730t
学会論文発表実績
- 「動画像分析を活用したフレッシュコンクリートの性状判定手法の検討」,コンクリートの性能評価試験の合理化・省力化に関するシンポジウム論文集,日本コンクリート工学会,2019年9月
- 「動画像分析を活用したコンクリートの全量受入れ管理システム」,コンクリートテクノ,Vol.39,No.4,2020年4月
- 「動画像分析を活用したフレッシュコンクリートの性状判定手法に関する研究」,コンクリート工学年次論文集,Vol.42,No.1,2020年7月
- 「動画像と連続RI水分計を併用した全量受入れ管理」,土木学会,第75回年次学術講演会,Ⅴ-414,2020年9月
AI配筋検査システム
たった一人でも配筋検査ができる時代へ
コンクリート工事では施工サイクル毎に発注者立会の元、鉄筋組立が設計通りに完了しているか検査を行いますが、鉄筋径を区別するマーキングや鉄筋の間隔を示すスケールスタッフの設置に多くの手間を要しており、長年に亘り省力化が望まれてきました。
本システムは、ステレオカメラと高度な画像処理技術を活用することで、鉄筋の径・本数・間隔などの高精度計測を実現しました。計測結果は撮影画像に重畳して書き込まれ、写真と計測値はPCに取り込めるデジタルデータ形式で出力可能になっています。また、既存の施工管理ソフトと連携可能なため、帳票作成にかかる手間も削減可能となっており、事前準備から帳票作成まで配筋検査業務全体の省力化に貢献します。
令和2年度「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」総合評価A
特許登録済
NETIS KT-230164-A
AI配筋検査イメージ
- キーワード
- 配筋検査、画像処理、AI、ステレオカメラ、施工管理、i-Construction
本システムの概要
鹿島の協力の上で三菱電機エンジニアリングが開発している本システムは、タブレット端末に2眼のステレオカメラを固定し一体化した構成になっており、現場の過酷な環境でも対応できるように防塵防水性能(IP65)や耐衝撃性を有しています。
検査担当者はカメラで検査対象を撮影するだけで、鉄筋の径・本数・間隔を自動で計測することができます。撮影した画像を活用して3次元復元し、システム内部に組み込まれたAI技術を用いて処理することで、現場環境に依存しない高精度な鉄筋検出・計測を実現しています。鉄筋の径、本数や間隔などの計測情報は、電子マーカやキャプションとともに配筋画像上に表示されるだけでなく、自動で電子黒板上にも転記されるため、黒板の記入やマーカ、スケールスタッフの設置業務が不要になり、大幅な現場業務の省力化が期待できます。
配筋検査端末
システム画面
耐環境性能実験(左:1.2m高からの落下実験 右:耐水実験)
特長・メリットココがポイント
配筋検査業務の生産性向上
鉄筋の径・本数・間隔を自動で計測でき、計測写真上に計測結果が記載されるため、マーカやスケールロッド設置等の現地で行う事前準備が不要になります。検査後のデータも検査端末から出力でき、施工管理ソフトに取り込むことで検査帳票が容易に作成可能となっているため、配筋検査業務全体の省力化が期待できます。
本システム導入の効果
高精度での鉄筋検出
国土交通省検査基準を満たす鉄筋検出率・鉄筋径判別率・鉄筋間隔誤差での計測を実現しています。
- 鉄筋検出率96.4%
- 鉄筋径判別率94.2%
- 平均間隔誤差±5mm以内
※撮影距離1~2m、撮影角度30°の場合
精度検証結果
現場要望に合わせた追加開発
ユーザニーズに合わせた各種機能を順次追加しております。
- 2点間計測機能:
任意の2点間を画面上で選択して計測が可能です。継手長の計測などに使用できます。 - 広範囲計測機能:
複数枚の撮影した画像の重畳により広範囲の計測が可能になります。 - スペーサー計測機能:
画像上に電子マーカーを設置し、単位当たりのスペーサー個数を計測できます。
2点間計測機能
広範囲計測機能
社会実装の状況
国土交通省の検査要領に対応
国土交通省はICTによる鉄筋出来形計測の省力化を目指し、「デジタルデータを活用した鉄筋出来形計測」に関する検査要領を策定しています。本要領では所定の性能を有するデジタルカメラ等による鉄筋径・本数・間隔の検査が認められており、鉄筋かぶりや重ね継手長の計測も妨げないことが明記されております。本システムは精度検証の結果、出来形管理基準で要求された計測精度を十分満たしていることが認められ、本要領に基づいて検査することが可能となっています。
国土交通省 国土技術政策総合研究所主導による精度検証「ブラインドテスト」への協力
デジタルカメラ等による鉄筋出来形計測では、同種技術も様々な工夫により高精度での鉄筋本数・間隔の判別ができている一方で、異形棒鋼の特性から1ランク違いの鉄筋径を正確に判別することは難しいとされていました。そこで国総研主導のもと、鉄筋のメーカー・形状の違い・径の違いを織り交ぜた特殊な計測条件でのブラインドテストが実施されました。テストの結果、鉄筋間隔の正答率は100%、鉄筋径の正答率は94%と評価いただき、本システムが公表している精度と同等の結果となりました。
適用実績
中部縦貫下切高架橋PC上部工事
橋梁主桁
場所:岐阜県高山市
工期:2022年3月~2024年2月
発注者:国土交通省中部地方整備局
適用規模:橋梁延長276m 幅員11m 橋梁主桁
東京外環中央JCT
北側ランプ(その2)工事 函渠構造物
場所:東京都三鷹市
工期:2021年4月~2022年3月
発注者:国土交通省関東地方整備局
適用規模:施工延長0.95km 函渠構造物
公田笠間トンネル工事 掘割盛土擁壁区間
場所:神奈川県横浜市
工期:2016年4月~2024年3月
発注者:東日本高速道路関東支社
適用規模:施工延長0.4km 掘割盛土擁壁区間
学会論文発表実績
- 「AI配筋検査システムの更なる高度化」,令和5年度土木学会全国大会,第78回年次学術講演会,2023年
- 「普及が始まったAI配筋検査システム」,総合土木技術誌 土木施工,2022年度1月号
- 「AI技術を活用した自動配筋検査システムの開発と社会実装」,令和2年度土木学会全国大会,第75回年次学術講演会,2021年
- 「AI技術を活用した自動配筋検査システム」,一般社団法人日本建設業連合会,新技術・新工法に関するオンライン講習会,2021年
- 「鉄筋径や間隔をAIで自動判別する配筋検査システム」,日経コンストラクション,2021年3月8日号
現場見える化統合管理システム
Field Browser®(フィールドブラウザ)
人、モノ、建設機械、環境等の現場情報をIoTで一元管理
現場見える化統合管理システム「Field Browser®」は、人、モノ、建設機械の位置や稼働状況を、気象や交通情報などの環境情報と合わせてIoTで一元管理(見える化)し、問題・課題を"リアルタイムに把握"して"タイムリーに解決"するためのシステムです。
建設現場を見える化する第一歩は、人や建設機械の位置、作業状態を把握することであり、その要素技術はある程度確立されています。本システムは、これまで個別に導入し運用してきた各種システムのデータを連携・集約することで、1つの管理画面で運用できるようにしたものです。
本システムは、職員が状況を確認するために現場に出向く時間を省略するだけでなく、各システムで取得したデータを集約・分析することで、次の計画の最適化につなげることができる、働き方改革につながるDXソリューションです。
令和3年度土木学会 技術開発賞
システムイメージ
- キーワード
- IoT、DX、見える化、統合管理、働き方改革、デジタルツイン、位置情報、稼働情報、気象、交通
システムの概要
「Field Browser」は、個々のサービスを提供する事業者のシステムと連携し、地図上に現場図面を重ね合わせ、人、モノ、建設機械などのリアルタイムの位置情報を、気象情報・交通情報と合わせて一元表示します。
- 人と建設機械・車両等の位置情報が所属や職種・機械種別ごとに表示され、計画どおりの場所、人員、機械配置で作業が行われているかを現地に行かなくても把握可能。
- 定点カメラ映像と位置情報をリンクさせることで、人員、機械配置と合わせてより正確な状況把握が可能。
- 人物についてはリアルタイムのバイタル情報が表示され、体調不良者を即時発見し対処可能。
- 建設機械、車両については、現在の稼働/非稼働状態に加え、蓄積された過去の稼働時間から稼働率を集計可能。
- 気象情報については、降雨や落雷を含むリアルタイムの天候に加え、72時間先の予報を確認可能。
- 現場に設置した振動・騒音計、気象計のリアルタイムデータが確認可能。
Field Browserの地図画面
Field Browserの集計画面
特長・メリットココがポイント
現場状況の把握を遠隔から、効率的に
- 今、誰が、どこで、どのような作業をしているのかを、現場から離れた事務所や支店・本社でも常時把握できるため、迅速かつ的確な指示命令が可能です。
- 現場では不要な移動や作業待ちが無くなることで、現地立ち会い等の現場管理業務の効率化も図られます。
- 支店・本社では遠隔パトロール等において、現場担当がどこにいるのか、カメラがどこを映しているのかといった情報の補完にも役立ち、客先と共有することで遠隔臨場にも活用できます。
現場事務所での運用状況(枚方工事事務所)
作業計画の最適化
- 作業員や建設機械の作業場所、滞在時間、稼働率等を分析することで、次計画時の最適配置や手配台数の検討に活用できます。
- 72時間先の気象予報に応じた対策・作業計画の見直し等の事前検討が可能です。
現場状況を本社でリアルタイムに確認
画面表示や機能の柔軟なカスタマイズ
- 地図画面上にブロックを設定し、そのブロックごとの滞在者、集計値をリアルタイムに表示することができます。これにより、どのブロックに何人の職員、作業員が滞在しているかが、より分かりやすくなります。
- ブロック内を進入検知エリアとして設定することができ、スマートフォンの測位アプリ利用者本人にアラート通知が届きます。
地図画面上のブロック内の状況を一目で確認
- 橋梁工事等の高低差のある現場において、3Dモデル上に職員や作業員の位置をリアルタイムに表示できます。作業の上下関係を把握することができ、安全性の向上や作業指示の効率化が図られます。
現場作業の上下関係を一目で把握
適用実績
関越自動車道 阿能川橋床版取替工事
場所:新潟県南魚沼郡
工期:2021年4月~2027年2月
発注者:東日本高速道路 新潟支社
規模:床版取替約7,700m2(阿能川橋上り線628m+土樽橋上り線93m、下り線32m)
橋脚耐震補強36基(阿能川橋18基+土樽橋18基)
塗替塗装約4.6万m2(阿能川橋上下線)
横浜環状南線 釜利谷庄戸トンネル工事
場所:神奈川県横浜市
工期:2021年2月~2026年10月
発注者:東日本高速道路 関東支社
規模:総延長約1,160m 土工延長約40m
トンネル延長約2,240m 函体工約265m
平等処分場建設工事
(1-1工区 準備工事、
その1・その2工事)
場所:富山県富山市
工期:2020年9月~2026年10月
発注者:富山環境整備
規模:伐根、集積、運搬27万m2
切土工105万m3 盛土工29万m3
調整池堰堤一式(生コン総量1,318m3)
貯留堰堤一式(生コン総量3,261m3) 他
新名神高速道路 枚方工事
場所:大阪府枚方市
工期:2018年9月~2028年5月
発注者:西日本高速道路 関西支社
規模:延長1,140m 地中連壁工約28,000m2 擁壁工U型擁壁約170m 橋台2基 橋脚18基 換気所1基 回転立坑1基
上記現場以外にも標準ツールとして様々な現場で活用しています。
学会論文発表実績
- 「現場の見える化統合管理プラットフォームの3次元化と現場への適用」,土木学会,第79回年次学術講演会,2024年9月
- 「BLEビーコンを利用した建設現場における簡易センシング技術の開発と活用」,土木学会,第78回年次学術講演会,2023年9月
- 「現場の見える化統合管理プラットフォームの活用と効果」,土木学会,第47回土木情報学シンポジウム,2022年9月
- 「現場の見える化統合管理プラットフォームの構築と現場実装」,土木学会,第77回年次学術講演会,2022年9月
- 「現場状況の一元管理(見える化)システムの現場適用とその効果」,土木学会,第45回土木情報学シンポジウム,2020年9月
車両運行管理システム
「スマートG-Safe®」
工事用車両のリアルタイム運行管理と出来高管理の
自動化・運行計画の最適化を実現
車両運行管理システム「スマートG-Safe」は、ダンプトラック等の工事用車両にスマートフォンもしくはタブレットPCを設置し、走行中の車両の安全管理・運行管理をリアルタイムに行うシステムです。
速度監視・警告、走行中の注意喚起といった安全管理に加え、車両の位置・到着時間の把握や、運行管理者と運転手の双方向通信などが可能なシステムです。加えて、狭隘な道路におけるすれ違い管理、出来高管理の自動化、運行実績データの見える化・分析による運行計画の最適化など、現場のニーズに合わせた機能向上と応用により、工事用車両の安全な運行と作業効率の向上を実現します。
特許登録済
NETIS KT-230198-A
車載スマートフォンと音声警告イメージ
システム概念図
※本システムの導入はカジマメカトロエンジニアリングにて対応しています。
- キーワード
- 車両、運行管理、安全管理、出来高管理、GNSS、GPS、見える化、最適化
基本機能
速度監視・注意喚起
GNSSによってリアルタイムに速度を計測・監視し、区間ごとに予め設定した制限速度を超過すると運転手へ音声警告するとともに現場管理者にメールが自動送信されます。また、システムの地図上で設定した走行注意箇所を車両が通過すると、音声メッセージで注意喚起を行うことができます。音声メッセージには主に以下の種類のものが標準として用意されているほか、オリジナルに作成する事もできます。
- 速度制限指示(法定速度以外での設定も可能)
- 走行注意箇所(通学路指定等の注意喚起)
- 通行ルート案内(現場への指定ルートを指示)
リアルタイムでの車両位置の確認と運転手との双方向通信による緊密な連携
工事車両の位置をGNSSにより把握し、車両の現在位置を現場事務所の運行管理画面および車載端末の地図上にリアルタイムに表示できます。また、運行管理画面から送信した任意のメッセージを車載端末で音声によって運転手に伝えることができるとともに、運転手は積込開始・完了、輸送開始・完了といった作業情報入力や緊急連絡を画面タッチで行うことができます。
運行管理者と運転手との双方向通信を可能とすることで、運行状況や道路・交通状況をいち早く把握し、作業の効率化と安全性向上を実現します。
運行管理イメージ
特長・メリットココがポイント
狭隘区間で対向する工事車両のすれ違いを管理
「スマートG-Safe」では、運行管理画面と車載端末の両方に全車両の位置情報を更新間隔5秒で表示しています。対向する車両同士の位置をタイムラグ無く把握できるため、安全なすれ違い管理が可能となっています。積載物の有無判別(実車・空車)と仮想ゲート位置の工夫により、実車優先の管理ができます。
狭隘区間でのすれ違い管理イメージ
積載物の管理と出来高管理を実現
何を、いつ、どこから、どこへ、どのくらい運搬したかを自動記録し、集計できます。集計されたデータから出来高を迅速かつ確実に管理することが可能となり、運行管理日報も自動作成できます。
運行管理日報イメージ
他システムとの連携による管理の効率化
自社開発であるメリットを活かし、他の開発システムとの連携による機能拡張を積極的に進めています。
①「生コン打設管理システム」との連携
従来手入力していた生コン工場からの出荷、現場到着、打設開始、打設完了等の時刻情報を、「スマートG-Safe」の機能を用いて自動記録することを実現し、管理作業の大幅な省力化を図っています。
②トンネル坑内外のシームレス位置検知の実現
Wi-Fiとビーコン(発信機)によるトンネル坑内の位置検知システムと「スマートG-Safe」を連携させることで、車載端末1台で坑内外の測位方式や画面表示の切替えを自動で行い、各システムの操作や管理を坑内外の境界なくシームレスに行えるようにしています。
③道路交通情報VICSとの連携による所要時間予測精度向上
渋滞などの道路交通情報を提供するVICSと連携し、所要時間予測の精度向上に加え、走行可能な複数ルートの所要時間を走行中に随時比較し、最適なルートを選択することが可能です。
適用実績
横浜環状南線公田笠間トンネル工事
場所:神奈川県横浜市
工期:2016年4月~2024年3月
発注者:東日本高速道路 関東支社
規模:泥土圧式シールド工 トンネル内径14.19m 施工延長3,448m およびU型擁壁
平成29年度中間貯蔵(大熊1工区)
土壌貯蔵施設等工事
場所:福島県双葉郡
工期:2017年5月~2021年3月
発注者:環境省
規模:受入・分別施設と土壌貯蔵施設の建設、除去土壌等の輸送・分別処理・貯蔵処理対象物量1,194,900t
大分川ダム建設(一期・二期)工事
場所:大分県大分市
竣工年:2019年11月
発注者:国土交通省九州地方整備局
規模:中央コア型ロックフィルダム
堤高91.6m 堤頂長400m 堤体積387万m3
災害廃棄物処理事業(石巻ブロック)
場所:宮城県石巻市
工期:2011年9月~2014年9月
発注者:宮城県
規模:処理量 災害廃棄物232万t 津波堆積物71万t 合計303万t 対象区域(石巻市、東松島市、女川町)
学会論文発表実績
- 「工事車両運行実績データの見える化・分析・活用方法」,土木学会,第74回年次学術講演会,2019年9月
- 「車両運行管理システムによる運転支援と車両・輸送物のリアルタイム管理」,土木学会,第72回年次学術講演会,2017年9月
- 「車両運行管理システムによるトレーサビリティ確保とすれ違い管理の実現」,土木学会,第71回年次学術講演会,2016年9月
- 「車両運行管理システムによる輸送・出来高管理の実現と安全性向上」,平成27年度建設施工と建設機械シンポジウム論文集・梗概集,2015年12月
- 「タブレット型GPS端末を利用した車両運行管理システム『スマートG-SAFE』の開発と適用」,土木学会,第68回年次学術講演会,2013年9月
振動ローラによる締固め管理システム
全地球衛星測位システム(GNSS)を利用した振動ローラ締固め管理システム
本システムは、RTK-GNSS測位法を利用した締固め機械の転圧回数管理システムです。
振動ローラの位置と各部の実転圧回数を段階的に色分けして、キャビン内のパソコンにリアルタイムで表示することで、締固め回数の過不足とその位置をオペレータが現場で把握することができます。また複数台の振動ローラを使用し施工している場合、お互いに他機が実施した転圧情報を共有することが可能で、複数の振動ローラで大量の施工を行う場合でも過不足のない転圧回数を維持継続することができます。
RTK-GNSS:測りたい移動局(未知点)の他に位置が分かっている固定局(既知点)を必要とする相対測位方式で、位置情報と誤差情報をリアルタイムに算定し移動局の測位を行う。
大分川ダム:令和元年度土木学会賞 技術賞(Ⅰグループ)
小石原川ダム:令和2年度土木学会賞 技術開発賞(遮水性盛土の総合的な品質管理法の開発)
システムイメージ図
- キーワード
- GNSS測量、RTK-GNSS、振動ローラ、締固め管理システム、転圧回数、品質向上
本システムの特長と主要構成機器
転圧管理
- 常時、現場で転圧回数の過不足を確認できます。
- 転圧データの共有化を図れます。
- 複数台の振動ローラ複数による同時施工においても、過不足のない転圧回数を維持継続できます。
システム構成図
システム主要構成機器
本システムの機能
転圧回数管理
締固め回数を色で区別し、リアルタイムにモニタ表示することができます。
転圧回数管理画面/3D-CADによる転圧管理帳票
転圧データの共有化
複数台の振動ローラを使用する場合、他機の実施した転圧情報をリアルタイムに共有することが可能で、全施工エリアに対して過不足のない転圧回数を維持継続することができます。
システム構成図
適用実績
小石原川ダム本体建設工事
場所:福岡県朝倉市・東峰村
竣工年:2021年3月
発注者:水資源機構
規模:中央コア型ロックフィルダム
堤高139m 堤頂長558m 堤体積870万m3
大分川ダム建設(一期・二期)工事
場所:大分県大分市
竣工年:2019年11月
発注者:国土交通省九州地方整備局
規模:中央コア型ロックフィルダム
堤高91.6m 堤頂長400m 堤体積387万m3
五ケ山ダム堤体建設工事
場所:福岡県那珂川市
竣工年:2018年3月
発注者:福岡県
規模:重力式コンクリートダム
堤高102.5m 堤頂長556m 堤体積93.5万m3
新東名高速道路牧平
場所:愛知県岡崎市
発注者:中日本高速道路
規模:掘削153万m3 盛土80万m3
胆沢ダム
場所:岩手県奥州市
竣工年:2013年11月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:堤体積1,350万m3
湯西川ダム
場所:栃木県日光市
竣工年:2012年9月
発注者:国土交通省関東地方整備局
規模:堤体積103.2万m3
殿ダム
場所:鳥取県鳥取市
竣工年:2012年1月
発注者:国土交通省中国地方整備局
規模:堤体積211万m3
資材のトレーサビリティ管理を行う
「Kトレース®」
各資材の個別情報と位置情報を紐づけて一元管理
建設現場では、大量の資材を仮置き場に保管し、適宜抽出して使用する場面があります。その際、仮置き場においては、類似した資材や寸法が異なる資材が多数存在する、また、資材を置く順番と使用する順番が異なる等、使用資材の選定間違いが発生しやすい状況があります。その対策として、各資材の認識番号等の個別情報と位置情報を仮置きの際に記録・保存する方法等が実施されていますが、これを手作業で行う場合、人為的な間違いが発生する懸念があります。また、記録作業や資材を抽出する作業に多大な労力と時間を要することも課題でした。
そこで、資材の個別情報(寸法、重量、写真)をWEB上に登録し、GNSSで取得した位置情報と紐付けることで、大量の資材の位置情報を瞬時に把握できるシステム「Kトレース®」を開発しました。
2024年度エンジニアリング功労者賞 奨励特別賞
資材位置の登録
資材位置の検索・表示
関連情報
- キーワード
- WEBアプリ、資材個別情報(寸法、写真、重量等)、位置情報、検索
作業手順
Kトレースを丸亀城石垣崩落復旧整備事業(2018年の豪雨および台風で崩落した石垣の復旧工事)の石材管理に適用しています。
石垣崩落部の解体作業(丸亀城石垣崩落復旧整備事業)
仮置きされた石材
記録手順(丸亀城石垣復旧事業 解体・仮置き時)
1)資材(石材)の個別情報(認識番号、寸法、重量、写真)をKトレースに登録する。
資材の写真撮影
寸法測定
2)石材を仮置場に搬入し、石材の位置が確定したらKトレースを起動してGNSSによる測位を行い、位置情報と個別情報を紐付けて保存する。
仮置き位置の測位と個別情報紐付
検索手順(丸亀城石垣復旧事業 復旧時)
作業当日、使用する資材を仮置き場で探す際は、認識番号を入力し、検索することで、仮置き場内の各資材の位置を図面上に瞬時に表示。
資材検索画面(スマートフォン画面)
資材検索結果画面
特長・メリットココがポイント
- 個別情報と位置情報とを紐付けて保存し、検索により図面上に瞬時に表示できるため、大量に存在する資材の中から必要な資材を簡易・迅速・正確に抽出可能。
- 個別情報と位置情報とが自動的に紐付けられるため、記録時の人為的な間違いが生じない。
- 外部測位サービスを付加することで、より正確な位置情報(水平精度±5cm)の把握が可能。
- データはクラウドサーバに自動保存されるため、記録用PCなどからデータを移行する手間がなく、保存と同時にRPAでデータ処理することも可能。
- WEB上のシステムのため、使用時のインストールは不要。インターネットに接続できる環境であれば、スマートフォンやタブレットなどのデバイス機器での利用が可能。
適用実績
丸亀城石垣崩落復旧整備事業
場所:香川県丸亀市一番丁 丸亀城内
竣工年:2028年3月(予定)
発注者:香川県丸亀市
規模:石垣復旧面積 約2,630m2
(帯曲輪1,160m2、三の丸1,470m2)
石材回収個数 約11,000個
ハイブリッド遠隔コミュニケーションシステム
動画と静止画の組み合わせで実現する
革新的なコミュニケーションシステム
建設現場で活用が進んでいる遠隔臨場では、一般的なWeb会議システムが多く用いられていますが、通信環境が良好でない状況では閲覧できる映像の解像度が低下し、現場状況を十分に把握できない場合があります。また、高解像度動画を送信するための5Gなどのネットワーク整備は、多大なコストと時間がかかることが課題です。
本システムでは、全体状況の把握といった通常のコミュニケーションでは現場の通信状況に合わせた品質の動画を利用し、詳細確認が必要な際に高解像度の静止画を適宜送信するハイブリッドコミュニケーションを実現しました。これにより、一般的なネットワーク環境での遠隔コミュニケーションが促進され、建設現場の生産性向上に寄与します。
特許出願中
システムイメージ
- キーワード
- 動画、静止画、画像処理技術、遠隔臨場、コミュニケーション、i-Construction
本システムの概要
本システムは、1台のタブレット端末で現場の通信状況に合わせた品質の動画と高解像度の静止画をハイブリッドに組み合わせて送信する、新しい遠隔コミュニケーションシステムです。
- 高解像度カメラを搭載した専用のタブレット端末を使用して動画、静止画の配信を行います。
- 撮影された動画や静止画は、PCなどのWebブラウザを通じて確認することが可能です。
- 配信側、受信側ともにインターフェースはメイン画面とサブ画面に分かれており、それぞれで動画と静止画を表示し、必要に応じて切り替えることができます。
- 配信側と遠隔参加側は常に同一の画面を共有しながらコミュニケーションを行うことができ、双方の画面上には図示するためのポインタ表示も可能です。このため、的確な意思疎通が実現されます。
- 本システムは、鹿島とSHARPが共同で開発したWebベースの配信システムです。
システム概要図
特長・メリットココがポイント
遠隔臨場における生産性向上効果
遠隔臨場の適用が広がることにより、以下のメリットが挙げられます。
- 現地立会のために現場作業を長時間止めておくなどの調整による影響が低減
- 発注者が現地立会のために移動する時間の削減
現場配信側の利用イメージ
山岳トンネルの現場でも有用性を確認
通信環境としては比較的条件の悪いトンネル坑内において、切羽の現場立会を遠隔臨場で行いました。通常の遠隔臨場での生産性向上効果に加え、以下のメリットが挙げられます。
- 高い安全性:不安定な地山に近接する必要が無く、安全な位置から立会作業を実施
- より詳細な確認:現場状況によっては、本システムによる確認の方が現地よりも切羽状況を鮮明に確認可能
遠隔参加側の確認イメージ
適用実績
大津大石トンネル
場所:滋賀県大津市
竣工年:2019年5月~2025年2月
発注者:西日本高速道路
規模:トンネル延長上り線695m 下り線917m
設計掘削断面積127.3m2 内空断面積103.8m2
学会論文発表実績
- 「動画と静止画によるハイブリッド遠隔コミュニケーションシステム」,建設機械施工,2024年10月号
- 「高解像度カメラを活用した 現場遠隔管理システムの構築と現場実証」,第49回土木情報学シンポジウム,2024年
- 「ハイブリッド遠隔コミュニケーションシステムを用いたトンネル切羽の遠隔臨場」,土木学会,第79回年次学術講演会,2024年
AI画像解析による
作業人数・時間計測システム
工事出来高と連携させて詳細な歩掛を自動算出!
建設業では、人手不足と技能者の高齢化が大きな課題となっており、施工の生産性向上が強く求められています。生産性向上を図る上では、様々な作業に要した人的資源の投入量(人数と時間)を把握することが重要です。
そこで鹿島は、建設現場に設置している固定カメラの映像を用い、AI画像解析を活用した独自のシステムで解析を行うことにより、作業に関わる技能者数および作業時間を自動で把握するシステムを開発しました。
特許出願中
作業人数・時間計測システムの画面のイメージ(写真内の赤枠はAIが検出した技能者を示す)
- キーワード
- 計測システム、画像計測、画像認識、生産管理、建設マネジメント、土木情報学
本システムの概要
本システムでは、現場に設置されたWebカメラで画像を取得し、画像中に映った技能者をAIが認識し人数をカウントすることで、技能者数と作業時間を自動で計測できます。解析は分単位で行えるため、技能者の作業時間を詳細に把握可能で、工事出来高データと連携させることで、詳細な歩掛を算出できます。
死角などでカメラ1台では作業エリアをカバーできない場合、複数台のカメラを連携させて対象範囲をカバーすることができます。異なるカメラに同一人物が映った場合でも、鹿島が開発した独自のアルゴリズムにより重複なく人数が把握されます。映像と画像解析結果は社内のクラウドサーバに保存されるため、セキュリティは確保され、本社や支店からも確認可能です。
作業人数・時間計測システムの構成
特長・メリットココがポイント
人数検出のための特殊な機器が不要
現場の技能者は測位のための発信機等を所持する必要がなく、市販のカメラをそのまま使うことができるので特殊な機器を必要としません。
歩掛調査の省人化
これまで複数名の調査担当者が一定の期間、現場内で作業に立ち会い、記録していた歩掛調査を大幅に省人化できます。
これにより、多くの現場にて低コストで詳細な歩掛を把握することが可能となります。
クラウドによる情報共有と分析
データはクラウドサーバに集約されるため情報共有が容易であり、データを分析することによって今後の作業計画にフィードバックさせる等、さらなる生産性の向上に繋げることができます。
出来高と連携して自動算出される歩掛イメージ
適用実績
橋梁の現場で実績があります。
学会論文発表実績
- 「画像認識AIを用いた作業人工の計測」,建設機械施工,Vol.76 No.12,2024年
- 「画像AIを用いた技能者人工計測」,建設機械,第60巻10号,2024年
- 「深層学習を用いた画像解析による人工計測システムと工程分析手法」,第49回土木情報学シンポジウム,2024年
- 「AIによる画像認識を用いた作業員位置計測(その2)」,土木学会,第78回年次学術講演集,2023年
- 「AIによる画像認識を用いた作業員位置計測」,土木学会,第77回年次学術講演集,2022年