巡航RCD工法
重力式コンクリートダムの合理化施工であるRCD工法の
さらなる高速施工を可能とした工法
従来のRCD(Roller Compacted Dam-Concrete)工法は1リフト(1m)を3分割施工し、3日でリフトアップすることが最速とされてきました。
巡航RCD工法は、従来のRCD工法で打設速度向上の阻害要因となっていた、外部コンクリート先行打設、3分割施工による打止部の施工を、内部コンクリート先行打設、内部コンクリートの任意箇所での打止を行うことにより、打設設備能力をフルに発揮でき、打止前後の打設速度維持が図れることで、1リフトを2.5日でリフトアップすることを可能としました。
さらに、外部コンクリートの確実な締固め、内部コンクリートと外部コンクリート打設箇所の分離により錯綜作業の回避という、品質、安全性の向上も得られます。
巡航RCD施工状況
- キーワード
- 重力式コンクリートダム、巡航RCD工法、RCD工法、合理化施工、内部コンクリート先行、端部締固め、ソフトトリートメント
特長・メリットココがポイント
施工能力を最大限発揮
従来RCD工法は外部コンクリートを内部コンクリートに先行して打設し、打設ブロック毎に打止めるため、その時点での外部コンクリート打設に打設速度が抑えられていましたが、内部コンクリートを先行することで施工能力を最大限に引き出せます。
降雨や週末等の時間ロスを最小限に
従来は横継目での打止であったため、降雨予想時、週末等は余裕を持って打設を中断する必要がありましたが、任意箇所での打止が可能となったため、打設可能時間を延ばすことが可能となり、時間ロスを最小限とすることが可能となりました。
巡航RCD施工の流れ
適用実績
五ケ山ダム堤体建設工事
場所:福岡県那珂川市
竣工年:2018年3月
発注者:福岡県
規模:重力式コンクリートダム
堤高102.5m 堤頂長556m 堤体積93.5万m3
湯西川ダム
場所:栃木県日光市
竣工年:2012年9月
発注者:国土交通省関東地方整備局
規模:重力式コンクリートダム
堤高119m 堤頂長320m 堤体積106万m3
総貯水量7,500万m3
嘉瀬川ダム
場所:佐賀県佐賀市
竣工年:2012年3月
発注者:国土交通省九州地方整備局
規模:重力式コンクリートダム
堤高99m 堤頂長456m 堤体積96.5万m3
総貯水量7,100万m3
学会論文発表実績
- 「湯西川ダム本体建設工事における巡航RCD工法高速施工への取り組み」,土木学会土木建設技術発表会論文,2012年
CSG工法
現地発生材にセメント、水を混合した材料(CSG)を用いた、
構造物の構築方法
CSG(Cemented Sand and Gravel)とは、現地発生材(土石)とセメント、水を混合して得られる材料のことで、強度の定義とその試験方法、品質管理方法を有しているものをいいます。したがって必要強度が担保されていることから、重要な永久構造物であるダム本体等へ用いられています。また現地の材料を有効利用するため、環境保全・工期短縮・コスト縮減を図ることができます。
鹿島では世界で初めてCSG工法をダム本体へ適用した当別ダムをはじめ、滝沢ダム、稲葉ダム、嘉瀬川ダム、大滝ダム地滑り対策工事、そして台形CSG形式として最大規模の成瀬ダムなど数多くの実績に基づくノウハウを有しています。
国内最大規模の台形CSGダム 成瀬ダムの施工
- キーワード
- ダム、台形ダム、CSG工法、台形CSGダム、合理化、SPミキサ
特長・メリットココがポイント
材料の合理化、低コスト、環境保全の実現
- 分級・粒度調整・洗浄等を行わず、オーバーサイズの除去や破砕を行う程度で、現地の材料を有効利用することが可能です。
CSGプラント全景(成瀬ダム)
施工の合理化、短工期、低コストの実現
- 大規模な骨材プラントが不要であり、現地での材料製造や汎用機械による機械化施工によって、短工期、低コストでの施工が可能です。
CSG施工状況(成瀬ダム)
地すべり対策、防潮堤等ダム以外の構造物へも
適用可能
- 工事で発生する現地発生土を原材料として有効活用することが可能です。
- コンクリートガラや土砂の津波堆積物、瓦礫等も活用できます。
地すべり対策工事の施工状況(大滝地区地すべり対策)
適用実績
成瀬ダム堤体打設工事(第1期・第2期)
場所:秋田県東成瀬村
工期:2018年5月~2026年12月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:堤高114.5m 堤頂長755.0m
堤体積485万m3
夏井地区海岸堤防工事
場所:福島県いわき市
竣工年:2013年10月
発注者:福島県
規模:延長920m
体積6万m3(CSG堤4万m3)
高さ最大9m
当別ダム
場所:北海道石狩郡
竣工年:2012年10月
発注者:北海道
規模:堤高52m 堤頂長432m
堤体積80.6万m3 有効貯水量6,650万m3
稲葉ダム
場所:大分県竹田市
竣工年:2012年3月
発注者:大分県
規模:河床部CSG8万m3
鞍部CSG10万m3
大滝地区地すべり対策
場所:奈良県吉野郡
竣工年:2011年12月
発注者:国土交通省近畿地方整備局
規模:押え盛土工(CSG)22.48万m3
学会論文発表実績
- 「成瀬ダムにおける現場の工場化に向けた取組み」,土木学会土木建設技術発表会論文,2022年
- 「世界最初の台形CSGダムの施工実績」,土木学会土木建設技術発表会論文,2012年
- 「当別ダムでのCSGの施工について」,ダム工学,Vol22,No2,2012年
アスファルト表面遮水壁型ダム
フィルダムの遮水構造を、アスファルトによる表面遮水型とすることで
堤体材料の合理化と堤体のスリム化を達成
アスファルト表面遮水壁型ダム(Asphalt facing dam)は、遮水構造を土質材料であるコア材によらず、表面をアスファルトで覆い遮水することにより上下流面勾配を立てることができ、堤体積を縮減することが可能です。
またアスファルトはダム本体の盛土や基礎地盤との追従性が高いこと、機械化施工が可能であり施工速度が速いこと、稜線や曲面の施工が可能であること、メンテナンスが容易であることから、大規模な調整池や揚水式発電の調整池に本ダム形式が適用されています。
小丸川発電所上部調整池建設工事:平成21年度ダム工学会賞 技術賞
アスファルトフェーシングの施工状況
(小丸川発電所上部調整池)
- キーワード
- アスファルト表面遮水壁型ダム、アスファルトフェーシング、ICT施工、揚水式発電
特長・メリットココがポイント
ITを駆使した施工
- 大規模土工であるとともに曲面形状をなす貯水池形状に対応するため、3D-DAMCADを中心としてダンプトラックナビシステム、締固め管理システム、バックホウ及びブルドーザ3D施工支援システム、3D-NAVIシステムなど、最新のIT施工を行い、徹底した施工の合理化、効率化による工期の短縮、施工精度の確保、コストの縮減を図っています。
ブルドーザ3D施工システムによる施工
工程短縮を達成する施工の合理化
- 京極発電所上部調整池では従来の施工方法にとらわれずに、アスファルト表面遮水壁の基盤に常温で混合可能な水工フォームドアスファルト混合物を採用、遮水層の厚層化、監査廊のプレキャスト化など、施工可能時期が制限される環境においても、工程短縮の取組みを続けています。
アスファルトフェーシングの施工状況(京極発電所上部調整池)
適用実績
京極発電所上部調整池
場所:北海道虻田郡
発注者:北海道電力
規模:堤高22.6m 堤頂長1,140.9m
堤体積154万m3 総貯水容量440万m3
小丸川発電所上部調整池
(かなすみダム、大瀬内ダム)
場所:宮崎県児湯郡
竣工年:2007年7月
発注者:九州電力
総貯水容量:620万m3
かなすみダム
規模:堤高42.5m 堤頂長140m 堤体積39万m3
大瀬内ダム
規模:堤高65.5m 堤頂長166m 堤体積86万m3
万場調整池
場所:愛知県豊橋市
竣工年:1993年
発注者:農林水産省東海農政局
規模:堤高28.6m 堤頂長370m
堤体積82.5万m3 総貯水容量539万m3
沼原調整池
場所:栃木県那須塩原市
竣工年:1973年6月
発注者:電源開発
規模:堤高38m 堤頂長1,597m
堤体積126万m3 総貯水容量434万m3
学会論文発表実績
- 「フィルダム工事における情報化施工システムの開発」,ダム工学,13巻3号,2003年
- 「大規模アスファルトフェーシングダム工事への情報化施工(IT施工)の適用(その2)」,土木学会第58回年次講演会,2003年
- 「複雑な形状を呈する堤体基礎地盤掘削への情報化施工システムの採用 ~京極発電所上部調整池工事~」,地盤工学会技術報告集第48号,2008年
コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム
ロックフィルダムの遮水構造を、
コンクリートによる表面遮水壁型とすることで、堤体のスリム化を達成
コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム(Concrete Face Rockfill Dam以下CFRD)は、遮水構造を土質材料であるコア材によらず、鉄筋コンクリートの遮水壁にすることで、上下流面勾配を立てることが可能となり、その結果として堤体積を縮減できます。
また、土質材料を使用しないため、降雨等気象条件に対する制限が少なくなるため、施工可能日数の向上とも相まって施工速度の向上、工期の短縮が図れます。
以前の施工で懸念された不等沈下等の問題は、近年の締固め機械の能力向上、薄層敷均し工法によりクリアされ、施工例も増えてきています。
コンクリートフェーシング施工状況
- キーワード
- コンクリート表面遮水型ロックフィルダム、CFRD、フェーススラブ、コンクリートフェーシング
特長・メリットココがポイント
堤体積の縮減が可能
遮水構造をコンクリート遮水壁とすることで、堤体の大部分がロック材だけとなるため、堤体積を縮減することが可能(上流面勾配例:中央コア型ロックフィルダム1:2.0程度、CFRD1:1.5程度)となり、コスト縮減とともに、掘削地山改変量の縮減により環境面にも優しい工法と言えます。
CFRD断面図(ダウリガンガダム)
土質材料の不使用により材料入手が容易となるとともに、稼働日数の増加が可能
品質管理の厳しい土質材料の代わりに、材料入手が容易なコンクリートでの施工が可能となります。同時に気象条件に対しても施工条件が緩和され、稼働日数の増加につながり、工期短縮、コスト縮減を実現します。
適用実績
ダウリガンガダム
場所:インド共和国ウッタランチャル州
竣工年:2005年11月
発注者:インド水力発電公社
規模:コンクリートフェーシングロックフィルダム
堤高57m 堤頂長270m 堤体積118万m3
コンクリートフェーシング面積 18,557m2
学会論文発表実績
- 「神々が宿る地の水力発電所建設工事」,インドダウリガンガ水力発電所建設工事報告,電力土木,302号,2002年