開口がとられた半地下の高速道路部。天井の遮光板がのぞく(市川中工事)
都心交通の円滑化へ
外環道は,首都圏における「3環状9放射ネットワーク」の中核道路のひとつだ。都心に集中する交通を分散させ,都内の通過交通をバイパスさせることで,慢性的な渋滞の緩和や地域の環境改善と経済発展をめざしている。「圏央道(首都圏中央連絡自動車道)」と「中央環状線(首都高速道路中央環状線)」とともに3環状道路を構成する外環道は,都心から半径約15kmの円弧を描きながら,首都圏の各都市を総延長約85kmで結ぶ。
外環道千葉県区間(以下,外環千葉)は,松戸市小山から市川市高谷(こうや)へと至る延長約12kmのルート。この開通によって外環道の約6割が完成し,4つの放射道路(東関東自動車道,常磐自動車道,東北自動車道,関越自動車道)と接続された。湾岸エリアからの所要時間は,常磐道までが43分から15分へ,東北道までが54分から26分へと大幅に短縮※。観光交流の促進や物流の生産性向上への期待は大きい。
※外環・高谷JCTから三郷JCT,川口JCTへの所要時間。国土交通省関東地方整備局などによる開通1週間後の記者発表資料より。
交通環境の向上へ
周辺地域の交通環境に対しては,沿線道路における渋滞を緩和できる。生活道路への迂回流入が減少することで,通学路などの安全性の向上も図られる。
外環千葉の最大の特徴は,半地下の構造である。ほとんどの高速道路部は地下へ,国道部は地上,その両側に緑の豊かな環境施設帯が設けられている。半世紀前の当初計画では高架構造だったが,沿線の住宅地への環境配慮などによって今回の半地下(掘割スリット)構造が実現した。
そして,住宅地の真っただ中の地下を通る道路の工事だからこそ,土木技術の創意と工夫が随所に注ぎ込まれることとなった。当社の代表的な担当工区として,住宅地の地下での大規模施工(国分工事,市川中(いちかわなか)工事),既存インフラとの立体交差(市川中工事),景観保全エリアでの地下掘削(小塚山トンネル工事),そして既存の高速道路への接続(高谷ジャンクション橋東工事)といった建設風景を振り返っていく。
高速道路部が地下に整備された区間の標準構造。地上の国道部の外側には環境施設帯が設けられ,環境にやさしい道づくりがめざされている
3環状9放射ネットワークの概要
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外環葛飾大橋(下部工) 2012年竣工 |
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北総鉄道と交差する一般国道 298号(東京外かく環状道路) 新設工事に伴う函渠 2010年竣工 |
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小塚山トンネル工事 2010年竣工 |
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堀之内地区函渠その1工事 2010年竣工 |
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堀之内地区函渠その5工事 2016年竣工 |
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国分工事 2019年竣工予定 |
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市川中工事 2020年竣工予定 |
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高谷ジャンクション橋東工事 2013年竣工 |
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国分地区南掘割部試験工事 2009年竣工 |
①②③④⑧は現場提供
本項の図版は国土交通省 関東地方整備局WEBサイトを参考に作成
次ページ以降に紹介する工区の工事概要
Site 1
国分工事
- 場所:
- 千葉県市川市堀之内1丁目~国分1丁目
- 発注者:
- 東日本高速道路
- 設計者:
- 鹿島・大林JV
- 規模:
- 延長約1.8km 掘削工約83万m3 コンクリート工約22万m3 ほか
- 工期:
- 2010年1月~2019年3月
(東京土木支店JV施工)
Site 2
市川中工事
- 場所:
- 千葉県市川市国分1丁目~新田2丁目
- 発注者:
- 東日本高速道路
- 設計者:
- 鹿島・大林・鉄建JV
- 規模:
- 延長約1.5km 掘削工約92万m3 コンクリート工約24万m3 ほか
- 工期:
- 2010年11月~2020年7月
(東京土木支店JV施工)
Site 3
小塚山トンネル工事
- 場所:
- 千葉県市川市北国分1丁目地先
- 発注者:
- 国土交通省関東地方整備局
- 設計者:
- パシフィックコンサルタンツ
- 規模:
- RC構造ボックスカルバート
4車線トンネル―幅26.3m×高さ8.5m×長さ127m
2車線トンネル―幅11.7m×高さ8.1m×長さ133m 及び60m - 工期:
- 2005年3月~2010年3月
(東京土木支店JV施工)
Site 4
高谷ジャンクション橋東工事
- 場所:
- 千葉県市川市高谷~原木
- 発注者:
- 東日本高速道路
- 設計者:
- ドーユー大地(下部工・RC上部工),当社土木設計本部(PRC上部工)
- 規模:
- 施工延長670m
上部工―RC3~4径間連続多主版桁(拡幅4連)PRC6径間連続2主版桁(新設2連)
下部工―RC橋脚31基 RC橋台1基
基礎工―杭基礎(鋼管ソイルセメント杭,回転杭,鋼管杭)30基,ケーソン基礎1基 - 工期:
- 2009年11月~2013年8月
(東京土木支店施工)