阪神高速道路株式会社(社長:山澤和)と鹿島建設株式会社(社長:中村満義)は共同で、超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)を用いた、鋼床版と比較して同等の軽さながら、より高い疲労耐久性を有する道路橋床版を日本で初めて開発しました。
阪神高速道路では、先進の道路サービスを目指して、公募により選定した大学や企業と共同研究を行うなど、積極的に技術開発に取り組んでいます。一方鹿島は、独自のUFCを開発・実用化するなど高い技術力を保有しています。阪神高速道路と鹿島は、2011年より共同研究を行い開発に取り組んできた結果、このほど軽量かつ耐久性の高いUFC床版の実橋への採用が可能になりました。
今後、阪神高速道路と鹿島は、このUFC床版の実用化へ向けた検討を引き続き行うことにしています。
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UFC床版(見上げ) | ワッフル型のUFC床版 |
開発が進んだ都市部で高速道路橋を計画する際には、橋脚の位置や基礎の規模が制約されたり、非常に短い期間での建設が要求されたりすることから、軽量な鋼床版の使用頻度が他道路と比べ相対的に高くなっていますが、近年、既設橋においてはさまざまな要因による金属疲労亀裂が顕在化しています。新設橋梁においては構造改良によってリスクの低減がはかられていますが、舗装の損傷など付随した懸念も残されています。
そこで、阪神高速道路と鹿島は、鋼床版に代わる軽量かつ高耐久なコンクリート系の道路橋床版の開発を目指し、床版の材料にUFCを使用した道路橋床版の共同研究を2011年から開始しました。そして、詳細な解析(3次元FEM解析)による試設計、および輪荷重走行試験を行い、優れた疲労耐久性を実現したUFC床版を開発しました。
UFCは、通常のコンクリートの約5倍という高い圧縮強度を活かして、より大きなプレストレス(圧縮力)を導入でき、鋼繊維の補強効果から高い引張強度が得られることにより鉄筋が不要となるため、極限まで部材を薄くし、軽量化が可能です。また、組織が非常に緻密であるという材料特性から、高い耐久性も期待できます。鹿島では特殊な鋼繊維を使用した独自のUFCである「サクセム®」を2006年に開発、これまでに羽田空港D滑走路の桟橋部などに適用した実績があります。
今回、阪神高速道路と鹿島が開発したUFC床版は、鋼床版箱桁のデッキプレートおよび縦リブをUFC床版に置き換えるもので、リブの配置をワッフル型としてさらに軽量化をはかりました。リブには高強度PC鋼材を配置し、プレテンション方式で2方向にプレストレスを導入しています。
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鋼繊維 | UFC床版 実験供試体(見上げ) |
合成桁の床版への適用を想定し、UFC床版としての試設計、各種基本性能の確認を行いました。UFC床版は直接活荷重(構造物上を移動する車両の重量)を受けるスラブと、高強度PC鋼材を配置するリブから構成することとし、床版重量を鋼床版と同等とすることを目標に、それぞれ最小の部材厚として設定しました。床版の設計については、活荷重による発生応力度に対して構造の成立性を確認することを目的に詳細な解析を行いました。これらの試設計及び解析により、鋼床版と同等の軽さでUFC床版を構成できることが確認できました。
また、実際に「サクセム」を使用したUFC床版にて、車輪の走行を想定した輪荷重走行試験による安全性の検証も行いました。試験には大阪工業大学所有の輪荷重走行試験装置を用いて、100kNから220kNまで荷重を階段状に増加させながら、各荷重で4万回、合計20万回の輪荷重走行試験を行いました。これは設計荷重のおよそ2倍にあたる過酷な条件での試験で、阪神高速道路で実測された軸重の100年分以上に相当するものです。輪荷重走行試験の後、床版に水を張ってさらに4万回の輪荷重試験を行った後でも、床版に損傷はなく健全で、このUFC床版の高い疲労耐久性を確認できました。
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輪荷重走行試験状況 | 輪荷重走行試験プログラム |
今回開発したUFC床版は、鋼床版と同等の軽量化がはかられつつ、疲労耐久性に優れることが確認されました。床版の製作コストについても、鋼床版と同等以下と試算しています。
阪神高速道路と鹿島は、このUFC床版の実用化に向けた検討を引き続き行うことにしており、その高い耐久性から長大橋への適用(メンテナンス費用が低減)や、大規模更新時代に向けた既設床版の代替としての検討も進めていきます。
■阪神高速道路株式会社 | 経営企画部広報課 |
技術部技術開発課 |
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