建設重機10台を遠隔操作できる「無人化施工システム」を開発
解体用重機8台とクローラクレーン2台を同時に無人化施工
約500m離れた場所から遠隔操作を実現
鹿島(社長:中村満義)は、建設重機10台を同時に遠隔操作できる「無人化施工システム」を開発しました。
当社では、従来からダムなどの大規模造成工事において、高精度かつ効率的に工事を進めるため、情報化施工技術を積極的に導入してきました。
また、地震をはじめ水害や火山災害などの自然災害の発生した際、より安全な場所から復旧工事を行うための無人化施工技術(遠隔操作技術)を開発し、雲仙普賢岳噴火の除石工事、有珠山噴火の緊急砂防対策工事などに活用してきました。
このたび開発したシステムは、当社の無人化施工・遠隔操作に関する技術とノウハウを結集し、建設重機10台(解体用重機8台とクローラクレーン2台)を同時に、約500m離れた場所から遠隔操作を実現したものです。
多数の無線周波数が錯綜した作業環境下における複数台の重機操縦信号やカメラ映像の大容量データ伝送、遠隔操作を行うための長距離通信など、これまで適用されていなかった技術も駆使しています。
なお、東京電力福島第一原子力発電所3号機の原子炉建屋において、本システムを建屋上部の瓦礫解体・撤去工事に採用し、順調に稼働しています。
本工事では、長期にわたる高放射線量下での作業となるため、作業員の被ばく線量の低減を図りながら効率的に作業を行うためには、重機の無人化施工・遠隔操作技術が必須となります。今後、本技術を活用し、3号機の原子炉建屋瓦礫の解体・撤去作業を計画通り完了させることを目指していきます。
本システムの概要
1.建設重機10台を同時に無人化施工
複数の重機の操作信号や映像データを確実に伝送するため、作業エリア周囲に張り巡らされた光ファイバーやメッシュ型無線LANを用いたネットワークを構築しました。これにより重機の位置変化に柔軟に対応し確実に通信できるシステムとなっています。また、建屋上部の瓦礫撤去に用いられる吊り下げカッター機や油圧グラブバケット等の操作については、クローラークレーンジブにアンテナを設置することで正確な無線制御を可能にしました。
2.約500m離れた建屋内での遠隔操作により被ばく線量を低減
これまで無線による遠隔操作は100m程度が限界でしたが、作業エリアへ光ファイバーケーブルにて通信信号を送ることで500m離れた遠隔操作室での遠隔操作が可能となります。建屋内はごく低線量(5マイクロシーベルト/h程度)で、オペレータはマスク、タイベックスーツが不要な環境で作業できます。被ばく線量低減を図るとともに、作業時間の大幅な拡大を達成しました。技術的には、更に遠隔地の東京都内でも遠隔運転操作が可能です。
3.大型クローラクレーンの無人化
解体部材の撤去などに用いる大型クローラクレーンは、操縦席パネルに表示される多くの情報を確認しながら操縦する必要があるため、他の重機のように操作信号の送受信のみでは安全な運用が困難です。そこで重機キャビン内外に複数台の監視カメラやマイクを設置し、映像や警報音などを操作室内で確認できるようにすることで、あたかも運転席にいるような感覚で操作が可能になります。
4.構台上の重機への燃料補給を無人化
今回の解体・撤去作業は、建屋周囲にフレームを構築し、フレームの上に解体重機を載せて作業を行います。比較的放射線量の高い構台上では、重機への燃料供給が課題となります。そこで、解体重機へ無人で燃料を供給するワンタッチ給油装置を開発しました。解体用重機にはワンタッチ給油口と燃料タンクガイドが取付けられ、クレーン操作にてガイドに燃料タンクを挿入することで解体用重機に燃料が供給できます。(特許出願中)
5.建設重機の放射線対策
福島第一原子力発電所構内の比較的放射線量の高い3号機原子炉の瓦礫解体・撤去工事を進めるにあたり、建設重機の制御機器及び通信機器やカメラ装置には鉛シートによる対放射線防護を施し、放射線による機器への影響を低減しています。

遠隔操作システムによる原子炉建屋上部の瓦礫解体・撤去イメージ(出典:東京電力)