姫路城大天守の素屋根工事が上棟
―世界遺産、国宝の保存修理工事―
鹿島(社長:中村満義)は、世界遺産、国宝(重要文化財)である姫路城の大天守保存修理工事を進めていますが、大天守を覆う素屋根工事がいよいよ上棟を迎え、鉄骨工事が完了する12月下旬には、姫路城大天守がすっぽりと鉄骨に覆われる予定です。
国宝姫路城大天守保存修理工事は、工事中の仮設としての8階建鉄骨造の「素屋根工事」と天守部分を修理、補修、補強する「修理工事」に大別され、トータル5年6ヶ月かけて大規模な修理を行うものです。
<工事中写真>
工事全景(2010年9月) 喜斎門から望む(2010年12月)
素屋根工事は、大天守の屋根や外壁の傷み・汚れの修理工事を行うために、大天守を完全に覆うように鉄骨造の仮設屋根をかけ風雨から守るものです。
2011(平成23)年初めには屋根や外壁で鉄骨の骨組も覆われ、約3年の保存修理工事期間、大天守はその姿が一時的に隠れます。素屋根の内部には作業スペースの他に、上層部に見学スペースが設けられ、修理工事を間近に見ることができます。
世界遺産の修理工事が原則として、常時一般公開されるのは国内初の試みであり、姫路城大天守を外側から間近に見ることができるのも初めてのことで、貴重な機会になります。
<素屋根内部イメージ図>

8階見学スペースパース図
鹿島は1956(昭和31)年から1964(昭和39)年に行われた「昭和の大修理」においても素屋根工事を担当し、当時は南正面から木製の巨大スロープをかけて資機材の搬出入を行いました。
約半世紀を経て、技術進歩による緻密な構造解析、機械化等の最新施工技術による素屋根工事を現在、行っております。他方、修理工事は、限られた職人の手による伝統技が成す漆喰や瓦の修理が主体として行われます。
最新技術と伝統技術が融合した工事が進められ、別名"白鷺(はくろ)城"と呼ばれる所以の白い漆喰が新しくなり、2014(平成26)年度
*に、再び姿を現す予定です。
(*) 修理工事は、壁や屋根の解体し、調査を行いながら、修理をしていくため、工程が変更となる場合があります。
■現在までの工事の流れ
【国宝(重要文化財)・世界遺産】
姫路城は大天守他が国宝であるのと同時に、城内の地面も特別史跡に指定されてい
ます。そのため、地面を掘ったり、杭を打ったりすることができず、植栽の伐採等も最小限
に抑える必要があります。また、世界遺産のために常時、世界各国から多数の見学者
が訪れます。そのため工事による姫路城見学ができない期間、エリアを出来る限り短く
(小さく)することが求められています。こうした特殊条件の中、設計監理の文化財建造
物保存技術協会の指導を受けつつ、当社JVは、2009(平成21)年10月に着工しました。
【工事進捗】
1.まず、測量〜施工計画検討、準備工事を進めました。資機材搬入路を確保するた
めに、最初に喜斎門橋の補強を行い、資機材の搬入を開始。その後、城郭の一部(腹
切丸)をまたぐ形で、高さ37m、長さ66mの仮設構台を架設。地表に影響を与えないよう
に、構台ならびに素屋根の基礎は、特殊シート敷設した上に砂利敷きをし、その上にコ
ンクリートの基礎を構築しました。
2.完成した構台の上にクローラークレーンを1台乗せ、大天守南正面まで構台を延長
していき、その後もう1台のクローラークレーンを乗せて、1台は資機材の搬入、もう1台
は、素屋根の鉄骨組みを行います。花見シーズンを終えた4月中旬に素屋根工事を開
始しました。
3.鉄骨は南正面から建方を開始。もっとも難工事であったのは、大天守と小天守の
間にある櫓の鉄骨建方でした。北西部の櫓は南正面のクレーンからは、見えません。
ブームを大天守の上部から回し、わずか1mちょっと屋根の間に建方を行いました。
<工事写真>
工事用構台からの大天守(2010年9月) 大小天守間の鉄骨取付の様子
屋根トラス鉄骨取付 素屋根内部
<昭和の大修理>
素屋根施工中に掲げた看板 資材搬出入のための200mの仮設桟橋
■工事概要
工 事 名 |
: 国宝姫路城大天守保存修理工事 |
工 事 場 所 |
: 兵庫県姫路市本町68番地 |
発 注 者 |
: 姫路市 |
設 計 監 理 |
: 公益財団法人文化財建造物保存技術協会 |
施 工 |
: 姫路城大天守保存修理JV (鹿島・神崎組・立建設共同企業体) |
工 期 |
: 2009年10月着工 5年6カ月(予定) |
階 数 |
: 大天守(木造)5層6階 地下1階 |
仮 設 |
: 素屋根(鉄骨造)8階 |
修 理 |
: 屋根瓦葺き替え・漆喰塗り替え・木床他改修・床耐震補強 |
設 備 |
: 一般客ゾーン/修理施工ゾーンに機械・昇降機・電気設置 |
建 物 用 途 |
: 文化財・城郭 国宝・世界遺産 |
■鹿島ホームページ
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