引きあげる、押す
別の場所で建物の一部を造り、それを引き上げたり、押したりしてあるべき場所に持っていく工法がある。資機材搬送の省力化、危険な高所作業からの解放など様々なメリットがあるこれらの工法は、もちろんコンピュータが発達したことによって生まれた新しい自動化工法である。
リフトアップ工法
二つのビルをつなぐ空中回廊や、門型のビルの場合に、ブリッジ部分を地上で組み上げて、それを引き上げる工法。資機材を建物上部まで一つずつ搬送する必要がなく省力化、短工期化が図れ、高所作業の危険性もなくなる。当社ではこれまでリバーサイド読売(1994年竣工・東京)で600t、テレコムセンタービル(1995年竣工予定・東京)で2,000tのリフトアップを行っている。
テレコムセンタービルは、ツインビルを最上部で接続した門型の建物である。そのブリッジ部分を地上で組み立てた後、高さ80m、地上20階の位置までリフトアップした。作業は、建物側面に取り付けた24台の油圧ジャッキで1ステップ15cm、1時間で5.1mずつ上昇させる。延べ2日間の作業で、重さ2,000tのブリッジを高さ80mまで持ち上げた。
また、電力中央研究所横須賀研究所短絡試験棟(1994年竣工・横浜)では、ジャーキーシステムと呼ばれるリフトアップ工法で、工期短縮と高所作業の減少、全天候型工法を同時に実現した。1,000平方mの屋根を作り、リフトアップしながら足元で壁を継ぎ足していく。内外壁はリフトアップ中に仕上げてしまうため、構造的に強くなる立体トラス構造を採用した。

プッシュアップ工法
リフトアップが引き上げる工法なら、プッシュアップは建物全体を地上から押し上げる工法である。世界最大級の格納庫・羽田西側格納庫(1993年竣工・東京)は幅100m、長さ200m。ジャンボジェット3機を収容できる広さを持つ。この格納庫の大屋根をプッシュアップ工法で構築した。総重量6,000tを越える大屋根を地上で組み立て、8台の油圧ジャッキで1ストローク25cmずつ尺取虫のように伸縮して、高さ42mまで押し上げる。ジャッキの操作、プッシュアップ作業のモニタリング、制御は全て中央管理室のコンピュータを利用して行われ、安全かつ効率的に作業は進められた。

カジマ・スーパースライディング工法
建物を実際に建てる位置とは別の場所で構築し、それを水平移動して完成させる工法。特定の場所で築造した建物を次々と送り出し、工場のように流れ作業的に作業を行うことができ、仮設資材の大幅な低減と作業の効率化、安全性を図ることができる。
上大岡駅前再開発ビル(1996年竣工予定・横浜)では、既存駅舎の上空にスパン40mの大スパン架構を架設。作業は人や電車のいない夜間に行われるのが普通だが、スーパースライディング工法の安全性が認められ、鉄道が運行中の昼間に行うことを可能とした。5回のスライディングで合計72m、総重量約4,000tを移動。11階建の駅ビルの6階部分までの鉄骨は、安全かつ迅速に施工された。

写真は鹿島月報より転載
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