04KAJIMA202504Diversity,EquityandInclusion特集

05KAJIMA202504 少子高齢化の進展に伴う建設産業における労働力人口の減少は,持続的な社会基盤整備を担う当社にとっても差し迫った問題であり,その解決には,多様な個性や背景を持つ全ての社員が活躍できるようDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を進める必要があります。 私は,DE&Iの定着には,この活動への「全社的なコミットメント」と社員が具体的なアイデアを試行錯誤しながら実行していく「各職場でのイノベーションの積み重ね」の両輪が必要であると考えています。 例えばこれまでに,「9時から16時の間に重要な会議を設定する取組み」を推進してきましたが,この取組みは,時間的な制約のある社員も現場でのキャリアを諦めることなく,個性や能力を存分に発揮して,新たな価値をともに創出し,その喜びを共有できるような企業文化を目指すものです。 今後も,こうした取組みを継続するとともに,新たに設置した「DE&I推進委員会」を中心に,多様な働き方を実現するための制度の見直し,心理的安全性の向上に向けた差別や不公平の排除,障がい者の雇用促進など,多岐にわたる課題に積極的に取り組んでまいります。 当社の経営理念,「科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展」を続けるためにも,多様な個性や背景を認め合い,新たな企業価値創造とイノベーションを推進していく,当社らしいDE&Iを会社と社員が一丸となり,進めていきましょう。組織で働く多様な人材が,個性や強みを活かしいきいきと働くことを目指すDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)。企業には,グローバル化,多様な働き方の浸透,少子高齢化による生産年齢人口の減少などに伴い,多様な人材が,各々のエンゲージメントを高めて働くことができる職場環境の整備が求められている。当社では,女性活躍の推進や男性育休取得推奨などにおいて,様々な取組みを行っているが,さらなるDE&I推進を目指し,「多様性をチカラに,次の100年をつくる!」をキャッチフレーズに,今年度から新体制を構築する。本誌では,今後DE&I推進に関わる様々な施策を発信していく。初弾となる今月号の特集では,当社が考えるDE&I推進の意義や目標,施策などを紹介する。多様性をチカラに,次の100年をつくる!Message社長 天野裕正

06KAJIMA202504DE&Iとは DE&Iは,①Diversity(多様性),②Equity(公平性),③Inclusion(包括性・受容性)を合わせた概念。性別や年齢,国籍,価値観など,多様な人材を認め合い,尊重し合いながら社会や組織に組み込み,活かすことを目指すD&Iをベースに,個々のバックグラウンドを勘案し,全ての人に公平な機会を与えることで,多様な背景を受容できる社会の実現を目指すものだ。 DE&Iのテーマは,女性の採用・活躍に加え,育児・介護などと仕事の両立支援に留まらず,働き方改革,シニア・障がい者・外国人・LGBTQなどの多様な人材の活躍などを併せて進めることが重要となる。それにより,人材確保やグローバル化に対応するだけではなく,様々な価値観や考え方の共有がイノベーションを生み出し,企業価値向上へ繋がっていくことが期待できる。 当社のDE&I推進の中核を担う西澤執行役員人事部長は「誰もがいきいきと働ける環境を醸成し,10年後もその先も,社員や学生,お客様,投資家など,全てのステークホルダーに選ばれるエンゲージメントの高い風土を社員とともに作っていけるよう,取り組んでまいります」と述べる。“Equity”が担う大きな役割 社員一人ひとりが活躍するためには,個々の特性に合わせたサポートを行う必要がある。下のイメージ図のとおり,Equity(公平性)とは真ん中の絵のごとく,女性や障がい者など,それぞれの特性に適した台を用意し,誰もが景色を見ることができるように整備することを指す。ただし右側の絵のように,さらにその先にある,台がなくとも誰でも景色が見えるフラットな状態が理想である。「性Equityを表すイメージ図。各々の特性の差を,身長差で表しているphoto:shinjiroyamada執行役員人事部長西澤直志

07KAJIMA202504別や年齢・人種などが理由でチャンスから遠ざけられることなく,いかなる仕事の機会に,誰でもチャレンジできるような職場環境を目指すことが重要です」。なぜ,当社にDE&Iが必要なのか 少子高齢化による生産年齢人口の減少と,さらなるグローバル化に伴い,場所や時間の制約などがありながらも,一人ひとりがいきいきと働き活躍できるような職場には,多様な人材が集まると言われている。「多様な価値観を認め合い,内包することは,企業倫理や法令遵守といった企業防衛の面でも大切なことです。また,会社が持続的に成長していくには,生産性向上とともに,全社員が成長を実感しながら活躍でき,長くこの会社で働きたいと思える風土と基盤を醸成していく必要があります」。これまでの当社の取組み 当社は長年,社員一人ひとりが公正・公平に活躍し,能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んできた。 1998年には人事部に「女性活躍推進専任担当者」を配置し,女性の能力発揮促進を目的とする研修などを実施し続けてきた。2014年には,さらなる女性採用拡大を図るべく,採用比率の拡大や女性管理職の倍増目標などを掲げ,経団連にて公表した。2015年には,人事部にダイバーシティ推進グループを設置し,育児や介護と仕事の両立実現を目指す施策を行ってきた。 会社として様々な取組みを行う一方,昨年,全社員を対象に実施したDE&Iに関するアンケートの結果,特にキャリアや女性活躍について,男女で認識の差が表れた。男性の約半数が,性別に関係なく,活躍・成長できる機会が平等に与えられていると感じているのに対し,そう感じている女性の割合は男性を大きく下回った。さらに,今後の会社生活やキャリアに不安を感じるかとの質問では,不安を感じる女性が男性を大きく上回った。この結果を踏まえ西澤人事部長は「当社のDE&Iはまだ発展途上であり,誰もが公平に,偏ることなく,生活やキャリアも諦めない風土の醸成に会社としてコミットし,社員全員が考え,進めていく必要があります」と話す。 次ページでは,DE&I推進強化を目的として,昨年8月,新たに当社が掲げた4つの目標を紹介する。・両立支援ガイド制定人事部ダイバーシティ推進グループのメンバー当社が取り組んできた施策photo:shinjiroyamada特集 KajimaDE&I多様性をチカラに,次の100年をつくる!

08KAJIMA202504当社は,2024年度,総合職女性の採用目標比率(20%以上)を上回る23%を達成,女性管理職・女性技能者数を2014年度実績の3倍に引き上げるなど,着々と実績を積み重ねてきた。しかし,様々な業界との比較において,当社の女性総合職・管理職者数は依然少数であること,また男性育児休業についても取得率をさらに向上しなければならないことなど課題が残る。そこで当社は,DE&Iをさらに推進するため,「多様性をチカラに,次の100年をつくる!」をキャッチフレーズに掲げ,2028年度までの達成を目指す4つの目標を設定した。4つの目標でDE&Iを推進 女性が能力を発揮し積極的に活躍できる環境整備を進め,女性比率や性別に関わらず,能力に応じて採用を拡大する。※1新卒採用における女性比率 在籍社員の定着促進とともに,出産・育児・介護などのライフイベントを経ても自分らしく働けるために個々のキャリアプランに寄り添い,キャリアを諦めないよう社員へのサポートを強化する。※2厚生労働省の指導基準による課長職以上※3マイルストーンとして,2028年度までに3.8%を達成する鹿島のDE&I公式webサイトがリニューアルオープンクリティカル・マス理論当社webサイトの「鹿島のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の特設サイトが4月中にリニューアルオープンします。サイトでは,当社のDE&Iに関する基本方針や推進体制,関連する制度から働いている社員の声など,よりいきいきと働くための様々な情報を随時更新し,公開予定です。少数派である人たちの構成比が30%を超えると,意思決定に影響を与えるという「クリティカル・マス理論」がある。同質性の高い組織では自浄作用が働きにくい傾向にあり,多様な意見を取り入れることが必要と言われている。12総合職女性採用※1比率を2028年度までに30%に引上げ女性管理職※2比率を2035年度までに10%に引上げ※3InformationTips総合職社員の男女比当社DE&I公式webサイトはこちらから▲

09KAJIMA202504 出産後の妊産婦の産後うつは産後3ヵ月以内に発症する可能性が高いことから,その回避には,男性の育児参加が有効となる。そのため当社では,育休取得予定を会社が早期に把握できるよう育休取得予定アンケートを実施し,希望するタイミングや期間で取得できるようにしている。 2月に設置されたDE&I推進委員会,人事部ダイバーシティ推進グループを主体とした幹事会で目標達成に向けた取組みを検討し,各部署・各支店の独自の取組みと連携しながら有効な施策を進めていく。 アンケートなどで寄せられた多岐にわたる課題に対して,全ての社員がいきいきと成長していける環境整備に取り組んでいく。34男性育児休業取得率100%うち取得日数30日以上を50%にする目標達成に向けた企業風土の醸成 第2子誕生の時に約半年間の育休を取得しました。周囲の方への報告は4ヵ月程前で,その後引継ぎを経て,育休に入りました。 育休中は,毎日ご飯を3食作り,上の子の幼稚園への送迎,下の子の寝かしつけなど,家事と育児を行う日々を送っていました。食事を作っている途中に子どもがお漏らしをしてしまって料理が中断!などは日常茶飯事で,育児は仕事と違い,自分のペースで進めることができない大変さも痛感しました。 育休終了の日が近づき,復帰後 第1子出産にあわせ育休を取得しました。元々,「現場では,男が育休を取るものではない,取れないのでは…」と思っていましたが,妻からの要望もあり,所長に相談しました。所長も育休を取得しての育児参加にイメージが湧かなかったため,ご自身のお嬢さんに相談してくださったそうで「産後の育児は特に大変だから,しっかりと関われるよう,テレワークとの両立ではなく,育休を2ヵ月くらいはまとめて取らせてあげた方がいい」とアドバイスをくれたそうです。現場事務所内への育休報告もしやすいように所長が調整してくださいました。 子どもが生まれ,育休に入り,妻も私も初めてのことだらけで,日々2人で試行錯誤しながら育児をしていました。最初の1ヵ月は妻の実家で過ごし,お陰で,義父母から育児のアドバイスをたくさんいただき,パパとしても少しずつ成長することができました。 職場への復帰が近づくにつれ,働くことができる楽しみな気持ちとともに,育児にできるだけ協力したメカトロニクス・ソリューション部自動化施工推進室 矢冨孝治主任育休期間:約6ヵ月鹿島南六郷物流センター新築工事事務所(当時) 照井隆之介工事担当育休期間:約2ヵ月の業務に不安を感じることもありましたが,復帰直後は,進行中のプロジェクトや新規タスクの把握を十分に実施することで,育休取得前のペースにスムーズに戻ることができました。 取得して良かったのは,家族との大切な時間をたくさん過ごせたこと,少しでも妻の助けになることができたことです。復帰後も家事・育児を続け,家族との絆はより一層強くなりました。また仕事に関しては,育休に入る前に自分の業務をすべて整理したことで優先順位が再確認でき,効率化を重視して業務を行うようになりました。部署内には,これから育休に入る後輩もいます。業務の引継ぎだけではなく,わからないことを相談する相手として,また復帰後,不安にならないように,サポートもしていきたいと思います。家庭と仕事,そして人生を長期的な目で見ても,数ヵ月単位での育休取得をお勧めします!  いという気持ちも強くなり,今でもなるべく早く帰宅し,育児をしています。 私は,現場の方々と所長,そのお嬢さん(笑)の協力があって,育休を取得することができました。育児の大変さを経験し,自分の価値観が変わったこと,家族の絆が強くなったこと,また,家族のために仕事をもっと頑張らないといけないと責任感が増したことなど,これからの人生の糧をたくさん得ることができました。これから入社してくる後輩たちのためにも,私たちが積極的に育休を取得し,男性の長期取得が当たり前になる社内風土を,みなさんで作っていきましょう!妊娠・出産は,大きなライフイベントのひとつだ。かけがえのない時間を家族と過ごした男性社員2名に,育児休業を経て,家庭と仕事に対する今の思いを聞いた。私たちの育休特集 KajimaDE&I多様性をチカラに,次の100年をつくる!

10KAJIMA202504 KajimaDE&IWeekでは,天野社長をはじめ,DE&I推進委員会や西澤人事部長からメッセージが伝えられた。Weekの2日目には,DE&I推進委員会委員長の竹川専務(建築管理本部長),同副委員長の風間副社長(土木管理本部長)と勝見副社長(総務管理本部長),委員の一人である越島副社長(海外事業本部長)から,各種別の特性を踏まえながら,DE&Iへかける想いや方針などについて,メッセージが配信され,会社側だけではなく,社員一丸となって,ともにDE&I推進を進めていく意気込みなどが発信された。 DE&I推進責任者である本社各部署・各支店のトップから,リレー形式によるメッセージ動画をWeekの3日目に配信。各部署・各支店ならではの特徴やカラーが伝わるキャッチフレーズとともに,DE&Iへの考え方や取組み内容などを紹介した。竹川専務(委員長)DE&I推進責任者によるリレー動画一覧風間副社長(副委員長)勝見副社長(副委員長)越島副社長(委員)DE&I推進委員会からのメッセージDE&I推進責任者からのリレー動画公開3月8日の国際女性デーに合わせ,3月3~7日に開催された「KajimaDE&IWeek」。当社が考えるDE&Iの方針や情報の共有,意識の啓発を図るべく,全社員を対象に社内イントラネットを通して,当社のDE&Iへかける想いや施策を動画などで配信した。ここからはKajimaDE&IWeekの取組みを振り返る。鹿島社員の皆さん社内イントラネットのトップページ右上「DE&I」タブをクリックすると,「KajimaDE&IWeek」の配信が見られます。5日間の配信を視聴して,DE&I推進に取り組んでいきましょう!

11KAJIMA202504 ハイライトとともに,西澤人事部長からの総括,今後の取組みなどを紹介した最終日。社員からは,様々な意見が寄せられた。西澤人事部長は,「社員からは『社長・幹部からのメッセージが聞けたことが良かった』という意見が多数寄せられました。また,新たにいただいた意見や要望は,今後の活動に活かしていきます」と振り返った。DE&Iは特別なものではなく,長時間労働とデジタル化・IT化が関係するように,会社が推進しているその他の施策と密接にリンクす特集 KajimaDE&I多様性をチカラに,次の100年をつくる!当社のDE&Iを推進する具体的な取組みの紹介DE&IWeekを振り返って介護に関する基礎知識から当社の介護支援制度など,様々な情報を網羅する「仕事×介護両立支援ハンドブック」9時から16時の間に会議を行っている土木の大阪モノレール瓜生堂工事事務所(大阪府東大阪市)今後の女性管理職へ向けたキャリアへの意識向上や,自分らしいリーダーシップなどを学ぶワークショップ「GLOWME」(東北支店開催時の集合写真)9時から16時の間に会議を取り入れている建築の三会堂ビル建替計画工事事務所(東京都港区)。育児と仕事を両立するため,フレックス勤務を利用している柿木祐希工事課長の声を紹介したる。また,育児や介護などのイベントに集中した後,キャリアを再開するなど選択肢の幅を広げることは,ワークライフバランスの充実に繋がる。 「DE&Iの思想は,同質性の高い組織で発生しやすいハラスメントの防止や,ビジネスにおける人権尊重にも不可欠な要素です。このDE&IWeekを皮切りに,さらなるDE&I推進を目指すべく,社員からも有効と考えられる施策や意見を聞かせてほしいです。多様性をチカラに,次の100年をつくっていきましょう!」と締め括った。   本誌では引き続き,当社のDE&Iを紹介していく。 「多様性をチカラに,次の100年をつくる!」を目指す取組みの一つとして,人事部ダイバーシティ推進グループから,女性活躍推進や,育児・介護などとの両立支援における活動をWeekの4日目に紹介。また,働き方改革の一環として「9時から16時の間に重要な会議を設定する取組み」を実施している土木・建築現場の様子を,育児と仕事を両立している社員の声などとともに動画配信したほか,障がい者雇用促進についても,当社の考えや今後の方針を伝えた。tobecontinued…